動画ビットレートとは？画質とファイルサイズの関係をわかりやすく解説

「動画を書き出したらファイルサイズが大きすぎた」「画質を上げたいけど、どの設定をいじればいいの？」——動画編集や配信をしていると、必ず出会う「ビットレート」という言葉。なんとなく聞いたことはあっても、正確に理解している人は意外と少ないのではないでしょうか。

実は、ビットレートを理解することで、動画の画質とファイルサイズを自由にコントロールできるようになります。この記事では、動画ビットレートの基本から、用途別の最適な設定値、設定方法まで、初心者にもわかりやすく徹底解説します。

動画ビットレートの基本を理解しよう

まずは「ビットレート」が何を表しているのか、基本的な概念から理解していきましょう。難しそうに見えますが、実はシンプルな考え方です。

ビットレートとは何か

ビットレート（bit rate）とは、1秒間に転送されるデータ量を表す単位です。動画の場合、1秒間の映像を表現するためにどれだけのデータを使うかを示しています。

単位はbps（bits per second）で表され、動画では一般的にkbps（キロビット/秒）やMbps（メガビット/秒）が使われます。

• 1 kbps = 1,000 bps
• 1 Mbps = 1,000 kbps = 1,000,000 bps

たとえば「10 Mbps」の動画は、1秒間に1,000万ビット（約1.25 MB）のデータを使って映像を表現していることになります。

ビットレートと画質の関係

基本的に、ビットレートが高いほど画質が良くなります。これは、より多くのデータを使って細かい情報まで記録できるためです。動画の滑らかさや色の再現性、細部のディテールなど、映像のあらゆる品質に影響を与えます。

ビットレートとファイルサイズの関係

ビットレートはファイルサイズに直結します。計算式は以下の通りです。

つまり、同じ長さの動画でも、ビットレートを2倍にすればファイルサイズも約2倍になります。画質を上げたければファイルサイズが増え、ファイルサイズを小さくしたければ画質が下がる——このトレードオフを理解することが重要です。

映像ビットレートと音声ビットレート

動画のビットレートは、映像ビットレートと音声ビットレートの合計で構成されています。

• 映像ビットレート：映像部分のデータ量。画質に直接影響
• 音声ビットレート：音声部分のデータ量。音質に影響

一般的に、映像ビットレートが全体の大部分を占めます。音声ビットレートは128〜320 kbps程度が標準的で、映像に比べるとファイルサイズへの影響は小さいです。

CBRとVBRの違い

ビットレートの設定方式には、主に2つの種類があります。

VBRは、動きの少ないシーンではビットレートを下げ、動きの激しいシーンではビットレートを上げることで、画質を維持しながらファイルサイズを抑えられます。多くの用途でVBRが推奨されますが、ライブ配信など安定性が求められる場面ではCBRが適しています。

解像度・フレームレートとビットレートの関係

ビットレートは単独で考えるものではなく、解像度やフレームレートとセットで考える必要があります。これらの要素がどう関係しているのかを理解しましょう。

解像度とビットレート

解像度は、映像の画素数（横×縦のピクセル数）を表します。解像度が高いほど、より細かい映像を表現できますが、その分多くのデータが必要になります。

解像度を上げた場合、それに見合ったビットレートを設定しないと、かえって画質が悪くなることもあります。高解像度なのにビットレートが低いと、圧縮ノイズが目立ってしまいます。

フレームレートとビットレート

フレームレートは、1秒間に表示される画像（フレーム）の数を表します。単位はfps（frames per second）です。

• 24 fps：映画でよく使われる。シネマティックな印象
• 30 fps：一般的な動画で使用。自然な動き
• 60 fps：滑らかな動き。ゲーム動画やスポーツに適している

フレームレートが上がると、1秒間に表示するフレーム数が増えるため、必要なデータ量も増加します。60 fpsの動画は30 fpsの動画に比べて、同じ画質を維持するために約1.5〜2倍のビットレートが必要になります。

動画の内容による違い

同じ解像度・フレームレートでも、動画の内容によって必要なビットレートは変わります。

• 動きが少ない動画（トーク、スライド説明など）：低めのビットレートでOK
• 動きが多い動画（アクション、スポーツなど）：高めのビットレートが必要
• 細かいディテールが多い動画（自然、テクスチャなど）：高めのビットレートが必要

用途別の最適なビットレート設定

実際に動画を作成・配信する際の、用途別のビットレート設定目安を紹介します。

YouTubeにアップロードする場合

YouTubeは独自の再エンコードを行うため、少し高めのビットレートでアップロードするのがおすすめです。

SNS投稿用（Twitter/X、Instagram）

SNSはプラットフォームごとに推奨設定が異なりますが、一般的に以下の設定が適しています。

ライブ配信（OBS、Streamlabs）

ライブ配信では、インターネット回線のアップロード速度を考慮する必要があります。ビットレートが回線速度を超えると、配信が途切れたりカクついたりします。

ライブ配信では、回線速度の約70〜80%程度をビットレートの上限として設定するのが安定運用のコツです。

プレゼン資料や教育動画

スライドを使ったプレゼンや教育動画は、動きが少ないため比較的低いビットレートでも問題ありません。

• 1080p/30fps：3〜5 Mbps
• 720p/30fps：2〜3 Mbps

文字がくっきり読めることが重要なので、ビットレートよりも解像度を優先したほうが良い場合もあります。

アーカイブ・バックアップ用

将来の編集や高画質での再利用を考えるなら、できるだけ高いビットレートで保存しておくことをおすすめします。

• 1080p：20〜50 Mbps
• 4K：100〜200 Mbps

ストレージ容量に余裕があれば、可能な限り高画質で保存しておくことで、後からの編集やSNSへの再投稿時に柔軟に対応できます。

動画編集ソフトでのビットレート設定方法

主要な動画編集ソフトでのビットレート設定方法を紹介します。

Adobe Premiere Proの場合

VBRを選択した場合は、「ターゲットビットレート」と「最大ビットレート」の両方を設定できます。最大ビットレートはターゲットの1.5〜2倍程度に設定するのが一般的です。

DaVinci Resolveの場合

1. 「デリバー」ページを開く
2. レンダー設定でフォーマットを選択（MP4など）
3. コーデックで「H.264」または「H.265」を選択
4. 「品質」の項目で「制限」を選択し、ビットレートを入力

DaVinci Resolveでは「自動」設定もありますが、細かい調整をしたい場合は手動でビットレートを指定しましょう。

Final Cut Proの場合

1. ファイル→共有→ファイルを書き出しを選択
2. 設定タブで形式を選択
3. 「ビデオコーデック」と「データレート」を設定

Final Cut Proでは「データレート」という名称で表示されますが、これがビットレートに相当します。

OBS Studioの場合（配信・録画）

ビットレート設定でよくある失敗と対策

ビットレート設定で陥りやすい失敗パターンと、その対策を紹介します。

ビットレートが高すぎる場合

症状：ファイルサイズが大きすぎる、アップロードに時間がかかる、視聴者の再生が重い

対策：

• 用途に合ったビットレートに下げる
• VBRを使用して効率化する
• 必要以上に高い解像度を使っていないか確認

ビットレートが低すぎる場合

症状：画質が悪い、ブロックノイズが目立つ、動きがカクカクする

対策：

• ビットレートを上げる
• 解像度を下げてビットレートを有効活用する
• フレームレートを下げる（60fps→30fpsなど）

回線速度を超えた設定（配信）

症状：配信がカクつく、途切れる、画質が自動で落ちる

対策：

• 回線速度を測定し、その70〜80%程度に設定
• 有線接続に切り替える
• 解像度を下げてビットレートを抑える

コーデックとビットレートの関係

ビットレートの効率は、使用するコーデック（圧縮方式）によっても変わります。

主要な動画コーデック

コーデックによる効率の違い

新しいコーデックほど圧縮効率が高く、同じ画質を低いビットレートで実現できます。

たとえば、H.265はH.264と比較して約40〜50%少ないビットレートで同等の画質を実現できます。ただし、エンコード・デコードに必要な処理能力が高く、対応機器も限られます。

初心者が陥りやすいビットレートの誤解

ビットレートについては、初心者が陥りやすい誤解がいくつかあります。正しい理解を持つことで、より効率的な動画制作ができるようになります。

誤解1：ビットレートを上げるほど常に画質が良くなる

多くの人が「とにかくビットレートを高くすれば画質が上がる」と考えがちですが、これは必ずしも正しくありません。

• 元の素材の品質以上にはならない（低画質素材を高ビットレートで書き出しても改善しない）
• 解像度に見合った適正値を超えると、ファイルサイズだけが増える
• コーデックの限界があり、一定以上は効果が薄れる

1080pの動画であれば、多くの場合20 Mbps程度で十分な画質が得られます。それ以上に上げても、人間の目で違いを認識するのは困難です。

誤解2：ビットレートと解像度は同じもの

「4Kは高画質」「1080pは低画質」と思い込んでいる人も多いですが、ビットレートと解像度は全く別の概念です。

誤解3：プロの動画は常に最高ビットレート

プロの映像制作では、必ずしも最高のビットレートを使用しているわけではありません。

• 配信プラットフォームの制限に合わせて最適化
• 視聴者の回線速度を考慮した設定
• コンテンツの特性に応じた効率的な設定

プロは「必要十分なビットレート」を見極めて設定しています。これにより、高画質を維持しながらファイルサイズを抑え、視聴者がストレスなく視聴できる動画を提供しています。

誤解4：CBRよりVBRが常に優れている

一般的にVBR（可変ビットレート）は効率的ですが、すべての場面で優れているわけではありません。

スマートフォンでの撮影とビットレート

現代では多くの人がスマートフォンで動画を撮影しています。スマートフォンにおけるビットレートの特徴を理解しておきましょう。

iPhoneの動画設定とビットレート

iPhoneでは設定アプリから動画の画質を選択できます。

iPhoneでは「高効率」フォーマット（HEVC/H.265）を選択することで、ファイルサイズを大幅に削減できます。ただし、古いデバイスでは再生できない場合があるため、互換性が必要な場合は「互換性優先」（H.264）を選択しましょう。

Androidスマートフォンの場合

Androidスマートフォンはメーカーや機種によって設定が異なりますが、多くの場合カメラアプリの設定から画質を選択できます。

• ハイエンド機種では4K/60fps撮影に対応
• 一部機種では8K撮影も可能（非常に高いビットレートが必要）
• ストレージ容量と相談しながら設定を選択

スマートフォン動画の編集時の注意点

スマートフォンで撮影した動画をPCで編集する際、いくつかの注意点があります。

• HEVCコーデック：編集ソフトによっては追加のコーデックインストールが必要
• VFR（可変フレームレート）：一部のソフトで音ズレの原因になることがある
• HDR撮影：通常の編集ワークフローでは色味がおかしくなることがある

問題が発生した場合は、編集前にCFR（固定フレームレート）のH.264形式に変換しておくと安定します。

ビットレートとストリーミングサービスの関係

NetflixやAmazon Prime Videoなどのストリーミングサービスでは、どのようなビットレートが使われているのでしょうか。

主要配信サービスのビットレート

各サービスは視聴環境に応じて自動的にビットレートを調整する「アダプティブストリーミング」を採用しています。

これらのサービスでは、高効率なコーデック（H.265、VP9、AV1など）を使用しているため、比較的低いビットレートでも高画質を維持しています。

なぜ配信サービスは低めのビットレートなのか

ストリーミングサービスのビットレートは、自分で動画を書き出すときの推奨値より低めに見えるかもしれません。これにはいくつかの理由があります。

• 帯域幅の節約：何百万人もの視聴者にコンテンツを配信するため、効率が重要
• 最新コーデックの活用：AV1などの高効率コーデックで低ビットレートでも高画質を実現
• 専門的なエンコーディング：シーンごとに最適化された高度な圧縮技術を使用
• 視聴環境の考慮：すべての視聴者がスムーズに再生できるよう配慮

動画ビットレートに関するよくある質問

ビットレートについてよく寄せられる質問と回答をまとめました。

Q. ビットレートを上げれば必ず画質は良くなる？

A. ある程度までは良くなりますが、上限があります。元の映像の画質以上にはなりませんし、必要以上にビットレートを上げてもファイルサイズが増えるだけで画質改善は頭打ちになります。解像度に見合った適切なビットレートを設定することが重要です。

Q. 動画を再エンコードするたびに画質は落ちる？

A. はい、基本的に落ちます。非可逆圧縮（lossy compression）を使うコーデックでは、エンコードのたびに情報が失われます。可能な限りオリジナルから直接書き出すか、中間ファイルには可逆圧縮（ProResなど）を使いましょう。

Q. 音声のビットレートはどのくらいが適切？

A. 一般的には128〜320 kbpsが適切です。音楽がメインのコンテンツなら256〜320 kbps、会話中心の動画なら128〜192 kbpsで十分です。音声はファイルサイズへの影響が小さいので、余裕を持った設定がおすすめです。

Q. スマホで撮影した動画のビットレートはどのくらい？

A. 機種や設定によりますが、1080p/30fpsで10〜20 Mbps程度が多いです。iPhoneのHEVC設定では効率的な圧縮が行われるため、比較的低いビットレートでも高画質を維持しています。4K撮影ではさらに高いビットレートになります。

Q. YouTubeにアップロードすると画質が落ちるのはなぜ？

A. YouTubeが再エンコードを行うためです。YouTubeはアップロードされた動画を独自のコーデック・ビットレートで再エンコードします。できるだけ高いビットレートでアップロードすることで、再エンコード後の画質低下を最小限に抑えられます。

Q. 4K動画は必ず4Kで書き出すべき？

A. 用途によります。4K対応デバイスでの視聴が前提なら4Kで書き出すべきですが、スマホでの視聴がメインなら1080pで十分な場合も多いです。ファイルサイズ、処理時間、視聴環境を考慮して判断しましょう。

Q. ゲーム配信に最適なビットレートは？

A. 1080p/60fpsで6,000〜8,000 kbpsが一般的です。ゲームの種類によっても変わります。動きの激しいFPSやレースゲームは高めのビットレートが必要です。また、Twitchではパートナー以外は6,000 kbpsが推奨上限となっているため、プラットフォームの制限も確認しましょう。

Q. 同じビットレートでもコーデックで画質が変わる？

A. はい、大きく変わります。H.265（HEVC）はH.264と比べて約40〜50%効率が良く、同じ画質なら半分程度のビットレートで済みます。AV1はさらに効率的ですが、対応デバイスが限られるため、現時点ではH.264かH.265が一般的な選択肢です。

Q. ビットレートを確認する方法は？

A. 動画のプロパティやMediaInfoなどのツールで確認できます。Windowsなら動画ファイルを右クリックして「プロパティ」→「詳細」タブ、Macなら「情報を見る」で確認可能です。より詳細な情報が必要な場合は、無料のMediaInfoというソフトウェアがおすすめです。

ビットレート設定のトラブルシューティング

ビットレート設定でうまくいかないときの対処法をまとめました。問題が起きたときに参考にしてください。

書き出した動画がカクカクする

動画がスムーズに再生されない場合、いくつかの原因が考えられます。一つずつ確認しましょう。

• ビットレートが高すぎる：再生デバイスのスペック不足。ビットレートを下げて試す
• 可変フレームレート（VFR）：編集ソフトとの相性問題。CFRに変換してから編集
• コーデック非対応：再生ソフトやデバイスがコーデックに対応していない

ファイルサイズが予想より大きい

書き出したファイルが思ったより大きくなる場合の対処法です。

• VBRを使用して効率化を図る
• 不要なシーンをカットして動画を短くする
• 解像度を下げることを検討する
• H.265など効率の良いコーデックに変更する

アップロードに時間がかかりすぎる

ファイルサイズが大きいとアップロード時間も長くなります。特にインターネット回線のアップロード速度が遅い環境では、数GBの動画ファイルをアップロードするのに数時間かかることもあります。

まとめ：ビットレートを理解して最適な動画を作成しよう

この記事では、動画ビットレートの基本概念から用途別の最適な設定値まで、実践的な情報を詳しく解説しました。

ビットレートは動画制作において非常に重要な要素ですが、一度理解してしまえば難しいものではありません。この記事で紹介した用途に応じた設定を覚えて、高画質かつ適切なファイルサイズの動画を作成していきましょう。

最初は推奨値を参考にして、実際に試しながら自分のコンテンツに最適な設定を見つけていってください。動画制作は試行錯誤の連続ですが、ビットレートの仕組みを理解していれば、問題が起きても原因を特定しやすくなります。