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国保と任意継続どっちが安い?年収別シミュレーションで損しない選び方

「退職したら健康保険はどうすればいいんだろう?」「国保と任意継続、どっちが安いの?」——退職を控えた方なら、一度は頭をよぎる疑問ではないでしょうか。

実はこの選択、年収や家族構成、お住まいの自治体によって答えがまったく変わります。なんとなくで選んでしまうと、年間で10万円以上も損をしてしまうケースも珍しくありません。さらに2022年の法改正で任意継続の途中脱退が可能になり、以前とは最適な戦略が変わっています。

この記事では、国保と任意継続のどっちが安いかを年収別のシミュレーションで具体的に比較し、あなたの状況に合った最適な選び方をわかりやすく解説します。扶養家族がいる場合の注意点、国保の軽減・減免制度、そして退職前にやるべき確認ステップまで、損をしないための情報をまとめました。

目次

国保と任意継続はどっちが安い?結論は「年収と家族構成」で決まる

年収400万円がひとつの分岐点になる理由

結論から言えば、国保と任意継続のどちらが安いかの分岐点は年収400万円前後にあります。

その理由は、任意継続には保険料の「上限額」が設定されているためです。協会けんぽの場合、標準報酬月額の上限は30万円(2025年度時点)で計算されるため、退職時の年収が高い人ほど実際の給与水準と比べて割安になります。一方、国保は前年の所得に対して一定率をかけて計算するため、年収が高いほど保険料も上がり続けます。

具体的には、年収300万円以下であれば国保が安くなる傾向があり、年収500万円以上では任意継続が安くなるケースが多くなります。年収400万円前後がちょうど「どちらとも言えない」グレーゾーンです。ただし、これはあくまで目安であり、お住まいの自治体や加入していた健康保険組合によって結果は変わります。

注意すべきは、この分岐点を知らずに「なんとなく任意継続」を選ぶ方が多いことです。年収が低めの方は、国保のほうが月に数千円〜1万円ほど安くなる可能性があるため、必ず両方の保険料を事前に確認してください。

扶養家族の有無で保険料が月1万円以上変わるケース

国保と任意継続の保険料差を大きく左右するのが、扶養家族の存在です。

任意継続では、在職中と同じように配偶者や子どもを「扶養」に入れることができ、扶養家族分の追加保険料はかかりません。これは在職中の社会保険と同じ仕組みです。一方、国保には扶養という概念がなく、世帯に加入する人数分だけ「均等割」が加算されます。

たとえば、配偶者と子ども2人を扶養している場合、国保では均等割が3人分追加されます。東京都世田谷区(2025年度)の場合、均等割は1人あたり年間約5万円ですので、3人分で年間約15万円、月あたり約1万2,500円の差が生まれます。

扶養家族が多い世帯では、年収が低めでも任意継続のほうが安くなることがあります。「年収だけ」で判断するのではなく、家族全体の保険料で比較することが重要です。

💡 押さえておきたいポイント
国保と任意継続の比較は「本人の保険料」だけでなく「家族全員の保険料合計」で行うのが鉄則です。扶養家族が1人増えるごとに、国保は年間4〜6万円の均等割が追加されます。配偶者や子どもがいる方は、任意継続のメリットが大きくなりやすい点を覚えておきましょう。

自治体によって国保の保険料が2倍近く違う現実

国保の保険料は全国一律ではなく、自治体ごとにまったく異なります。この事実を知らないと、正確な比較ができません。

国保の保険料率は市区町村が独自に設定しており、高齢化率や医療費の水準によって大きな差があります。厚生労働省の「国民健康保険事業年報」によると、1人あたりの保険料が最も高い自治体と最も低い自治体では、約1.8倍の差があります。

たとえば、同じ年収400万円・単身者でも、保険料率が高い自治体では年間約42万円、低い自治体では年間約24万円というケースがあります。一方、任意継続の保険料は加入していた健保組合や協会けんぽの都道府県支部によって決まるため、国保ほどの地域差はありません。

引っ越しを伴う退職・転職の場合は、転居先の自治体の保険料率を必ず確認してください。「前の住所では国保が安かったのに、引っ越し先では任意継続のほうが安かった」ということは十分に起こり得ます。

国保と任意継続の保険料の仕組みを比較|計算方法がまったく違う

任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額」で決まる

任意継続の保険料は、退職時の標準報酬月額をもとに計算されます。在職中は会社と折半だった保険料を、退職後は全額自己負担する仕組みです。

協会けんぽの場合、保険料率は都道府県ごとに異なり、2025年度は9.33%〜10.51%の範囲です(全国平均は約10%)。これに介護保険料率(40歳以上の場合1.59%)が加わります。標準報酬月額が30万円で保険料率10%の場合、月額の保険料は30万円×10%=3万円となります。

計算の手順としては、Step1:退職時の標準報酬月額を確認する(給与明細や健保組合に問い合わせ)。Step2:標準報酬月額と上限額(協会けんぽなら30万円)を比べ、低いほうを採用する。Step3:採用した金額に保険料率をかける。この3ステップで算出できます。

注意点として、任意継続の保険料は2年間変わりません。在職中のように昇給で保険料が上がることはありませんが、逆に退職後に収入が減っても保険料は下がりません。この「固定」という特性が、メリットにもデメリットにもなります。

国保の保険料は「前年の所得」と「世帯人数」で決まる

国保の保険料は、「所得割」「均等割」「平等割」の組み合わせで計算されます。自治体によって計算方式が異なりますが、基本の仕組みは共通です。

所得割は前年の総所得金額から基礎控除(43万円)を引いた金額に、自治体が定めた料率をかけたものです。均等割は加入者1人あたりの定額で、年間3〜6万円程度。平等割は1世帯あたりの定額ですが、採用していない自治体もあります。

具体的な計算例を示すと、前年の給与収入が400万円の場合、給与所得控除後の所得は276万円。ここから基礎控除43万円を引いた233万円が算定基礎額です。所得割率が8%の自治体なら、所得割は233万円×8%=約18.6万円。これに均等割(仮に5万円)を足して、年間約23.6万円、月額約2万円となります。

重要な注意点として、国保の保険料には上限額(賦課限度額)があります。2025年度の上限は医療分が65万円、後期高齢者支援金分が24万円、介護分が17万円で、合計106万円です。高所得者はこの上限に達するため、一定以上の年収では保険料が頭打ちになります。

任意継続には上限額がある|高年収ほど得になる仕組み

任意継続の最大のメリットは、保険料計算に使われる標準報酬月額に上限が設定されていることです。

協会けんぽの場合、任意継続の標準報酬月額の上限は30万円です。つまり、退職時の月収が50万円でも80万円でも、保険料の計算は30万円ベースで行われます。月収50万円の人なら、本来の保険料と比べて約4割も安くなる計算です。

一方、健康保険組合(組合健保)の場合は、上限額が組合ごとに異なります。協会けんぽより高い上限を設定している組合もあれば、独自の低い料率を適用している組合もあるため、事前確認が必須です。

ただし、年収が300万円以下の方にとってはこの「上限の恩恵」はほとんど受けられません。むしろ、在職中は会社が半額負担していた保険料を全額自分で払うことになるため、手取りベースでは負担感が大きくなります。上限のメリットが効くのは、退職時の標準報酬月額が上限額を超えている高年収層に限られます。

任意継続のメリット 任意継続のデメリット
・標準報酬月額に上限があり高年収者ほど割安
・扶養家族の追加保険料がゼロ
・保険料が2年間一定で見通しが立てやすい
・在職中と同等の給付内容を継続できる
・保険料が全額自己負担(会社負担分もすべて自分)
・収入が減っても保険料は下がらない
・加入期間は最長2年間のみ
・保険料滞納で即資格喪失のリスク

給付内容の違い|傷病手当金や付加給付はどうなる?

保険料だけでなく、給付内容にも違いがあることを知っておくべきです。

任意継続では、在職中とほぼ同じ給付が受けられます。高額療養費の自己負担限度額は同じですし、健康保険組合によっては付加給付(自己負担をさらに軽減する上乗せ給付)が継続されるケースもあります。大手企業の健保組合では、自己負担額が2万円や2万5,000円を超えた分を払い戻す付加給付を設けているところがあり、これは大きなメリットです。

一方、注意が必要なのは傷病手当金です。任意継続に加入しても、退職後に新たに発生した傷病に対しては傷病手当金は支給されません。在職中から継続して受給している場合のみ、残りの期間分が支給される仕組みです。

国保の給付内容は最低限の法定給付のみです。付加給付はなく、傷病手当金や出産手当金も原則ありません(一部自治体でコロナ特例あり)。持病がある方や通院頻度が高い方は、付加給付の有無を確認したうえで判断してください。

【年収別】国保と任意継続どっちが安いかシミュレーション

年収300万円以下なら国保が有利になりやすい

年収300万円以下の方は、多くの場合で国保のほうが安くなります。

理由は、年収が低い場合は国保の所得割が小さくなり、任意継続の「全額自己負担」の負担感のほうが大きくなるためです。年収250万円(月収約21万円)の場合、任意継続の保険料は標準報酬月額22万円で計算され、協会けんぽ(東京都・2025年度)では月額約2万2,000円です。一方、国保(東京都世田谷区の場合)では月額約1万6,000円程度になるケースがあります。

年間にすると約7万円の差です。退職後に収入が減ることを考えれば、この差は決して小さくありません。

ただし、扶養家族がいる場合はこの結論が逆転する可能性があります。配偶者1人を扶養に入れるだけで、国保では均等割が年間約5万円加算されます。年収が低くても扶養家族がいるなら、必ず両方を試算してください。

年収400万〜600万円は任意継続が有利になる分岐ゾーン

年収400万〜600万円は、国保と任意継続の保険料が拮抗する「分岐ゾーン」です。

この年収帯では、任意継続の上限額(協会けんぽで標準報酬月額30万円)のメリットが効き始めます。年収500万円(月収約42万円)の場合、任意継続の保険料は上限の30万円ベースで計算されるため、月額約3万円。一方、国保は前年の所得ベースで計算され、自治体にもよりますが月額3万5,000円〜4万円程度になるケースが多くなります。

この分岐ゾーンで判断のカギになるのは3つです。Step1:加入していた健保組合の上限額を確認する(組合独自の上限を設定している場合がある)。Step2:お住まいの自治体の国保保険料率を確認する。Step3:扶養家族の人数を加味して合計額を比較する。この3点を押さえれば、どちらが安いかが明確になります。

「面倒だから任意継続にしておこう」と安易に決めると、年間で3万〜5万円ほど損をする可能性があります。退職前の数時間を使って試算するだけで取り戻せる金額ですから、ぜひ確認してください。

年収700万円以上は任意継続が圧倒的に安くなる

年収700万円以上の方は、ほぼ確実に任意継続のほうが安くなります。

年収700万円(月収約58万円)の場合、任意継続の保険料は上限の30万円ベースで月額約3万円。一方、国保は前年の所得ベースで計算され、多くの自治体で月額5万〜7万円に達します。年間の差額は24万〜48万円にもなり、2年間では最大96万円もの差が出るケースもあります。

年収1,000万円を超えると、国保は賦課限度額(年間上限106万円、2025年度)に張り付く一方、任意継続は約36万円(月額約3万円×12か月)で済みます。年間70万円、2年で140万円の差です。

ただし注意したいのは、退職後に収入が大幅に減る予定がある場合です。国保は「前年の所得」で計算されるため、退職1年目は高い保険料がかかりますが、2年目は前年の所得が下がり保険料も下がります。任意継続は2年間保険料が変わらないため、2年目だけを見れば国保のほうが安くなる可能性があります。2022年の法改正で任意継続の途中脱退が可能になったため、「1年目は任意継続、2年目は国保に切り替え」という戦略も有効です。

📊 データで見る|年収帯別・保険料比較(未来の働き方調べ)

退職時の年収 任意継続(月額目安) 国保(月額目安) 安い方
250万円 約2.2万円 約1.6万円 国保
400万円 約3.0万円 約2.8万円 ほぼ同額
500万円 約3.0万円 約3.7万円 任意継続
700万円 約3.0万円 約5.5万円 任意継続
1,000万円 約3.0万円 約7.5万円 任意継続

※協会けんぽ(東京都)・単身者・40歳未満の場合の概算。国保は東京都特別区の料率で試算。自治体や健保組合によって異なります。

退職後に収入が激減するなら「2年通し」で比較する

退職後にしばらく無収入になる予定の方は、1年目と2年目を合算した「2年間の総額」で比較してください。

国保は前年の所得で計算されるため、退職1年目は在職中の高い年収がベースになり保険料も高額です。しかし2年目は、退職後の低い所得(失業給付は非課税のため所得に含まれない)がベースになるため、大幅に下がります。たとえば退職前の年収が600万円で、退職後に1年間無収入だった場合、2年目の国保保険料は均等割と平等割のみで年間5〜8万円程度まで下がります。

一方、任意継続は2年間同じ保険料です。月額3万円なら2年間で72万円。国保は1年目が高くても2年目で大幅に下がるため、2年合計では国保が安くなるケースがあります。

2022年の法改正により、任意継続は自己都合での途中脱退が可能になりました。そのため「1年目は任意継続で安く抑え、2年目は国保に切り替える」という柔軟な選択ができるようになっています。この戦略は、退職後に収入が大幅に減る方にとって最もお得な方法になり得ます。

扶養家族がいる場合は国保と任意継続どっちが安いか逆転する?

任意継続なら扶養家族の保険料はゼロ円

任意継続の大きなメリットは、扶養家族を追加しても保険料が変わらないことです。

健康保険の「被扶養者」制度では、年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)の配偶者や子どもを扶養に入れることができます。扶養家族が何人いても、保険料は被保険者本人の標準報酬月額だけで計算されます。つまり、配偶者と子ども3人の5人家族でも、単身者と同じ保険料です。

この仕組みは、扶養家族が多い世帯にとって大きなメリットです。たとえば配偶者と子ども2人の4人家族の場合、国保なら4人分の均等割がかかりますが、任意継続なら追加料金ゼロ。この差は年間15〜25万円にもなります。

ただし、扶養認定には条件があります。配偶者がパートやアルバイトで年収130万円以上を稼いでいる場合は扶養に入れません。また、別居している親族の場合は仕送り額などの条件も加わります。扶養に入れるかどうかは、事前に健保組合に確認しておきましょう。

国保は家族全員分の保険料が発生する

国保には「扶養」の概念がなく、世帯で加入する全員分の保険料が発生します。

国保の保険料は「所得割(所得に応じた部分)」と「均等割(1人あたり定額)」の合計です。配偶者が無収入であっても、均等割は人数分かかります。子どもについても同様で、0歳の赤ちゃんであっても均等割の対象です(ただし未就学児は均等割が5割軽減される制度があります)。

具体的な計算例として、東京都特別区で年収500万円・配偶者(無収入)・子ども2人の場合を見てみましょう。所得割は本人の所得のみで計算され約20万円、均等割は4人分で約20万円、合計で年間約40万円(月額約3.3万円)になります。同じ条件で任意継続なら月額約3万円ですので、扶養家族がいることで国保のほうが高くなるケースです。

ただし、配偶者にもある程度の所得がある場合は、国保でも所得割が加算されるため、さらに差が広がります。一方、世帯全体の所得が低い場合は、均等割の軽減(2割・5割・7割軽減)が適用される可能性もあります。

⚠️ 注意したいポイント
国保には扶養の概念がないため、「配偶者を扶養に入れているから安心」と思い込んで国保に切り替えると、想定外の保険料請求が届くことがあります。退職前に必ず、家族全員分の国保保険料を市区町村の窓口で試算してもらいましょう。試算は無料で、所得がわかる書類(源泉徴収票など)を持参すればその場で計算してもらえます。

配偶者がパートで年収130万円前後の場合は要注意

配偶者の年収が130万円前後の場合、どちらの保険に加入するかで家族全体の社会保険料が大きく変わります。

任意継続の扶養に入れる条件は「年収130万円未満」です。配偶者の年収が128万円なら扶養に入れますが、131万円なら入れません。扶養に入れない場合、配偶者自身が国保に加入するか、勤務先の社会保険に加入する必要があります。

具体的なシミュレーションとして、本人の年収500万円、配偶者の年収が「129万円」と「131万円」の場合を比較します。129万円なら扶養内で任意継続の保険料は本人分の月額約3万円のみ。131万円なら扶養から外れ、本人の任意継続3万円+配偶者の国保約5,000円で月額約3.5万円。たった2万円の年収差で、保険料が月5,000円(年間6万円)も変わるのです。

退職のタイミングで配偶者の働き方を見直すことも選択肢です。「130万円の壁」は社会保険料だけでなく、税金や配偶者控除にも影響するため、家計全体で最適な年収ラインを検討してください。

国保の軽減・減免制度を知らないと大損する理由

非自発的離職者は国保が最大7割軽減される

実は、会社都合の退職や倒産・解雇などの「非自発的離職」の場合、国保の保険料が大幅に軽減される制度があります。この制度を知らなかったために、任意継続を選んで損をしてしまう方が少なくありません。

非自発的離職者の軽減制度では、前年の給与所得を「100分の30」として計算します。つまり、所得を実質7割カットした金額で保険料が算定されるのです。年収600万円の方なら、通常の国保保険料が月額約5万円のところ、軽減後は月額約1.5万円程度まで下がるケースがあります。

この軽減を受けられるのは、雇用保険の「特定受給資格者」または「特定理由離職者」に該当する方です。離職票の離職理由コードが「11」「12」「21」「22」「23」「31」「32」「33」「34」に該当すれば対象になります。軽減期間は離職日の翌日から翌年度末までで、最長で約2年間適用されます。

注意すべきは、自己都合退職の場合はこの軽減制度が使えないことです。「会社と合意のうえで退職した」場合でも、離職理由コードによっては対象外になることがあるため、必ず離職票を確認してください。

🌱 焦らなくて大丈夫
「会社都合で退職になったけど、保険料のことまで頭が回らなかった……」という方もいらっしゃるかもしれません。非自発的離職者の軽減制度は、退職後でも申請可能です。すでに国保に加入している方は、市区町村の窓口で離職票(または雇用保険受給資格者証)を持参して申請すれば、遡って軽減が適用されるケースもあります。まだ間に合う可能性がありますので、心当たりのある方は一度窓口に相談してみてください。

所得が大幅に減った場合の減免申請の方法

国保には非自発的離職者向け以外にも、自治体独自の減免制度が用意されています。

多くの自治体では、前年と比べて所得が大幅に減少した場合(目安として3割以上の減少)に、保険料の減免を申請できます。これは自己都合退職の方でも利用できる制度です。減免の割合は自治体によって異なりますが、所得の減少幅に応じて2割〜全額免除まで設定されているところもあります。

申請の手順は次のとおりです。Step1:市区町村の国保窓口に電話または来所して、減免制度の有無と条件を確認する。Step2:前年の所得を証明する書類(源泉徴収票・確定申告書の控え)と、所得が減少したことを示す書類(離職票・退職証明書など)を準備する。Step3:減免申請書を記入して提出する。審査結果は通常2〜4週間で届きます。

減免が認められた場合は、保険料の変更通知が届き、すでに支払った分との差額が還付されることもあります。ただし、預貯金が一定額以上ある場合は対象外になる自治体もあるため、条件は必ず事前に確認してください。

意外と知られていない「前年所得ゼロ」の翌年メリット

意外と知られていないのですが、退職後に1年間無収入だった場合、翌年の国保保険料は劇的に安くなります。

国保の保険料は「前年の所得」で計算されるため、退職して1年間収入がなければ(失業給付は非課税で所得に含まれない)、翌年度の所得割はゼロになります。残るのは均等割と平等割のみで、さらに所得が一定以下であれば均等割の7割軽減が適用されます。

具体的には、単身者で前年所得ゼロの場合、均等割の7割軽減が適用されると年間の保険料は約1.5万〜2万円(月額約1,300〜1,700円)まで下がります。これは任意継続の月額約3万円と比べると圧倒的に安い金額です。

この仕組みを活かした戦略が「1年目は任意継続、2年目は国保に切り替え」です。退職1年目は前年の高い所得がベースになるため任意継続で保険料を抑え、2年目は所得が下がった状態で国保に切り替えることで、2年間トータルの保険料を最小化できます。2022年の法改正で任意継続の任意脱退が可能になったことで、この戦略が現実的に使えるようになりました。

任意継続の落とし穴|2年縛りと途中脱退のルール

2022年の法改正で何が変わった?途中脱退が可能に

2022年1月の健康保険法改正は、任意継続の制度を大きく変えました。最大の変更点は、被保険者自身の申し出による任意脱退が可能になったことです。

改正前は、任意継続を途中で辞めるには「保険料を意図的に滞納して資格喪失する」という裏技的な方法しかありませんでした。この方法は一定のリスクを伴い、無保険期間が生じる可能性もありました。改正後は、正式な手続きで翌月1日付の資格喪失ができるようになり、スムーズに国保へ切り替えられます。

この改正により、「1年目は任意継続、2年目は国保」という柔軟な使い分けが安心してできるようになりました。具体的な手続きとしては、加入している健保組合または協会けんぽに「資格喪失申出書」を提出します。申出書が受理された月の翌月1日に資格を喪失し、その日から国保に加入できます。

ただし、一度任意継続を脱退すると、再加入はできません。「やっぱり任意継続に戻りたい」と思っても不可能ですので、切り替えのタイミングは慎重に判断してください。事前に翌年度の国保保険料を試算してから脱退を決めるのがベストです。

保険料を1日でも滞納すると即資格喪失する厳しさ

任意継続の保険料は、毎月10日までに納付する必要があります。この期限は厳格で、1日でも遅れると即座に資格を喪失します。

在職中の健康保険は給与天引きのため滞納の心配はありませんが、任意継続では自分で毎月納付しなければなりません。口座振替に対応している健保組合もありますが、対応していない場合は毎月の振込みを忘れないよう管理が必要です。

実際に「うっかり1日遅れて資格喪失してしまった」というトラブルは珍しくありません。資格を喪失すると、その日から無保険状態になり、すぐに国保への加入手続きが必要になります。もし資格喪失から国保加入までの間に医療機関を受診すると、全額自己負担になるリスクがあります。

⚠️ 注意したいポイント
任意継続の保険料滞納による資格喪失は、「天災や交通事故などの正当な事由」がない限り取り消せません。スマホのリマインダーを設定する、口座振替の手続きをする、前納制度(6か月分・12か月分を一括払い)を利用するなど、確実に納付できる仕組みを整えておきましょう。前納を選ぶと割引が適用されるメリットもあります。

任意継続から国保への切り替えタイミングの見極め方

任意継続から国保への切り替えで最もお得になるタイミングは、「翌年度の国保保険料が確定する4〜6月」です。

国保の保険料は毎年6月頃に決定通知が届きます(4月から新年度の料率が適用されます)。退職して1年が経過した時点で、翌年度の国保保険料がいくらになるかを市区町村の窓口で試算してもらいましょう。任意継続の月額保険料と比較して、国保のほうが安くなっていれば切り替えのサインです。

切り替えの手順は次のとおりです。Step1:市区町村の窓口で翌年度の国保保険料を試算してもらう(1〜3月頃でも概算は出してもらえます)。Step2:国保のほうが安いと判断したら、健保組合に「資格喪失申出書」を提出する。Step3:資格喪失日(翌月1日)以降14日以内に、市区町村の窓口で国保の加入手続きを行う。

切り替え時の注意点として、任意継続の資格喪失日と国保の加入日に空白が生じないようにしてください。国保は届出日ではなく資格喪失日に遡って加入となりますが、手続きが遅れると保険証の発行が遅れ、一時的に医療費を全額負担する可能性があります。

国保と任意継続どっちが安いか迷ったときの判断フローチャート

退職前にやるべき3つの確認ステップ

国保と任意継続のどっちが安いかは、退職前に3つのことを確認すれば答えが出ます。

まず確認すべきは「任意継続の保険料」です。在職中の健保組合または協会けんぽに連絡し、任意継続した場合の月額保険料を教えてもらいます。この金額は退職後2年間変わらないため、ここで確定します。

次に「国保の保険料」を確認します。お住まいの市区町村の国保窓口に、前年の源泉徴収票を持参すれば試算してもらえます。電話で概算を教えてもらえる自治体も多いです。家族全員の加入を前提に、世帯全体の保険料を出してもらいましょう。

最後に「自分が非自発的離職者に該当するかどうか」を確認します。離職票の離職理由コードを見れば判断できます。該当する場合は国保の軽減制度が使えるため、軽減後の保険料でも比較してください。

この3つを確認するだけで、最適な選択が明確になります。所要時間は合計2〜3時間程度。退職後に「こっちのほうが安かったのに……」と後悔しないために、ぜひ退職前に済ませておいてください。

✅ 退職前にやるべきアクション

  1. Step1: 健保組合または協会けんぽに電話して、任意継続の月額保険料を確認する
  2. Step2: 市区町村の国保窓口で、源泉徴収票を持参し国保の保険料を試算してもらう
  3. Step3: 離職票の離職理由コードを確認し、非自発的離職者の軽減制度が使えるか判断する

健保組合・協会けんぽへの保険料照会の方法

任意継続の保険料を正確に知るには、加入している健保組合や協会けんぽに直接問い合わせるのが確実です。

協会けんぽの場合、お住まいの都道府県支部に電話するか、ホームページの保険料額表から自分で計算できます。必要な情報は「退職時の標準報酬月額」と「年齢(40歳以上かどうか=介護保険料の有無)」の2つだけです。標準報酬月額は給与明細の「健康保険料」欄から逆算できますが、わからなければ勤務先の人事・総務に聞くのが早いです。

健康保険組合の場合は、組合の窓口に直接問い合わせてください。組合独自の保険料率や上限額を設定しているため、協会けんぽとは金額が異なります。大企業の健保組合では任意継続の保険料が協会けんぽより安いケースも多いです。

問い合わせの際は「任意継続した場合の月額保険料と、付加給付が継続されるかどうか」を一緒に確認しておくと効率的です。付加給付がある健保組合では、保険料だけでなく給付面でも任意継続のメリットが大きくなります。

市区町村窓口で国保の試算を取る手順

国保の保険料は自治体の窓口で無料で試算してもらえます。退職前でも試算は可能です。

持参するものは前年の源泉徴収票(または確定申告書の控え)と、加入予定の家族全員のマイナンバーがわかるもの(マイナンバーカードや通知カード)です。窓口では「退職予定で国保の保険料を知りたい」と伝えれば、その場で概算を出してもらえます。

自治体によってはホームページ上に保険料のシミュレーションツールを公開しているところもあります。「〇〇市 国民健康保険 保険料 シミュレーション」で検索すれば見つかることが多いです。ただし、シミュレーションツールでは均等割の軽減や減免が反映されないことがあるため、正確な金額は窓口確認をおすすめします。

試算を取る際のポイントは、「通常の保険料」と「非自発的離職者軽減が適用された場合の保険料」の両方を聞いておくことです。退職の経緯によっては軽減制度が使える可能性があるため、両方の金額を把握しておけば判断材料が増えます。

迷ったら「とりあえず任意継続」が安全な理由

「どちらが安いかわからない」「退職まで時間がなくて試算できない」という場合は、まず任意継続を選ぶのが安全です。

その理由は、任意継続から国保への切り替えはいつでもできるが、国保から任意継続への切り替えは退職後20日以内しかできないためです。任意継続の加入手続きは退職日の翌日から20日以内に行う必要があり、この期限を過ぎると加入できなくなります。一方、任意継続から国保への切り替えは、2022年の法改正で自己都合の脱退が可能になったため、いつでもできます。

つまり、「とりあえず任意継続にして、あとから国保のほうが安いとわかったら切り替える」という戦略が取れるのです。逆に「とりあえず国保にして、あとで任意継続に切り替える」ことはできません(20日以内に手続きしなかった場合)。

任意継続の加入手続きに必要な書類は、「任意継続被保険者資格取得申出書」と「退職日が確認できる書類(退職証明書・離職票など)」です。退職が決まったら、在職中に健保組合から書類を取り寄せておくとスムーズです。

☑️ 退職前の健康保険チェックリスト

  • ☐ 任意継続の月額保険料を健保組合に確認した
  • ☐ 国保の保険料を市区町村窓口で試算してもらった
  • ☐ 離職理由コードを確認し、軽減制度の対象か判断した
  • ☐ 扶養家族全員分の保険料を含めて比較した
  • ☐ 2年間トータルの保険料で比較した(1年目だけで判断していない)
  • ☐ 任意継続の加入手続き書類を健保組合から取り寄せた

まとめ|国保と任意継続どっちが安いかは「調べた人」が得をする

国保と任意継続のどっちが安いかは、年収・扶養家族の有無・お住まいの自治体・退職理由によって答えが変わります。「正解はひとつではない」からこそ、自分の状況に合わせて調べることが何より大切です。

退職という大きな変化のなかで、健康保険のことまで調べるのは正直大変かもしれません。しかし、ここで数時間かけて比較するだけで、年間10万円以上の差が生まれることもあります。未来の自分が「あのとき調べておいてよかった」と思える選択をしてください。

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • 年収300万円以下は国保が安くなりやすい。年収500万円以上は任意継続が有利
  • 扶養家族がいる場合は任意継続のメリットが大きい(追加保険料ゼロ)
  • 非自発的離職(会社都合退職など)なら国保が最大7割軽減される
  • 自治体によって国保の保険料率は大きく異なるため、必ず窓口で試算を取る
  • 2022年の法改正で任意継続の途中脱退が可能になり、「1年目は任意継続、2年目は国保」の戦略が取れるようになった
  • 退職前に両方の保険料を確認することが最も確実な判断方法
  • 迷ったら「とりあえず任意継続」を選べば、あとから国保に切り替えられる

最初の一歩は、「任意継続の保険料」と「国保の保険料」を両方確認することです。健保組合への電話と市区町村窓口への相談、この2つのアクションだけで答えが出ます。退職が決まったら、できるだけ早めに動き出してみてください。あなたの家計を守る大切な判断を、データに基づいて自信を持って行いましょう。

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この記事を書いた人

働き方やキャリアの悩み、暮らしとお金の不安を、言葉で整理して伝えています。理想だけでは語れない現実の声を拾いながら、選択肢や視点をやさしく紹介することを心がけています。読んだ人が「自分のことかも」と感じて、少し前を向けるきっかけになればうれしいです。

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